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新英語教育研究会神奈川支部HP

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すずめ Sparrow

授業に歌を
Sparrow
 すずめ ♪サイモン&ガーファンクル(Simon & Garfunkel)


 今年はサイモン&ガーファンクルが6月に来日公演したこともあり、受動態を扱っている時期に、高校生で学ぶ「前置詞のある受動態」の表現に該当する、I'd be laughed at …(笑われるだろう)が入っている歌「Sparrow」を扱うことにした…、というのは表向きの理由。本当は「キリスト教文化の入った歌詞」「脚韻を優先した作詞」を紹介したかったのです。英語が本来持っている「物語の味わい」「詩的な薫り」を伝える授業にしましょう! 無味無臭の会話文と説明文が蔓延する授業、もうそろそろ止めにしませんか?

●文法で展開:前置詞のある受動態
I'd be laughed at …(笑われるだろう)
I'd be laughed at by the other swans.
(他の白鳥たちに笑われるだろう)と板書し、「前置詞のatとbyが続くので違和感がありますが、laugh at ~で他動詞のように見なしています。」と解説。
●音声で展開:破裂音
9行目The entire idea is utterly absurd.では、absurdが「アブサァ~d」ではなく「アプサァ~d」と発音され、bとpが破裂音で反転することを指摘。

●内容で展開その1:韻を優先させて歌詞を変える
まず「この歌の脚韻を抜粋しよう。」というクイズ。
2行目 r(ゥレ)est(ェスt)
4行目 n(ネ)est(ェスt)
5行目 br(ブレ)east(ェスt)

7行目 word(ワァ~d)
( )行目
( )行目
12行目 sparrow(スパァロゥ)
( )行目
( )行目
17行目 eulogy(ユ~ロジィ)
( )行目
( )行目
答えを確認し、「この中に、脚韻のために語順をかえている箇所があります。何行目?」と問う。
2行目 r(ゥレ)est(ェスt)
4行目 n(ネ)est(ェスt)
5行目 br(ブレ)east(ェスt)

7行目 word(ワァ~d)
9行目 absurd(アプサァ~d)
10行目 heard(ハァ~d)

12行目 sparrow(スパァロゥ)
14行目 know(ノゥ)
15行目 grow(グロゥ)

17行目 eulogy(ユ~ロジィ)
19行目 me(ミィ)
10行目 be(ビィ)

答えは20行目。From dust were ye made and dust ye shall be.(汝は塵から作られた、そして汝は塵になるのだ)は、現代語で普通の語順にすると、You were made from dust and you shall be dust.となる。それでは脚韻にならないので倒置してある。また脚韻を優先した作詞として「14行目のI won't share my branches with no sparrow's nest.(スズメの巣がない枝を共有しない)は、和訳が変ですね。shareという動詞は〈share+物+with+人〉で『人と物を共有する』で用いるので、歌詞を直すと、I won't share my branches with the sparrow.(スズメと枝を共有しない)となりますが、それでは韻を踏めません。そこで意味を損なわないように工夫して、nestで脚韻しました。日本語では言葉をそぎ落として、俳句や短歌の定型におさめることに苦心しましたが、英語では脚韻することに工夫を凝らします。」と解説。

●内容で展開その2:キリスト教の7つの大罪
キリスト教の「七つの大罪」(the seven deadly sins) 
1. 高慢:pride (vanity 虚栄心)
2. 羨望:envy (jealousy 嫉妬)
3. 怠惰:sloth (laziness 無精)
4. 暴食:gluttony (intemperance 不摂生、excesses 暴飲暴食) 
5. 貪欲:greed (avarice 貪欲)
6. 憤怒:wrath (ire《文語》怒り、anger 怒り)
7. 色欲:lust (desire 欲望)

1)日本語版CD『水曜の朝、午前3時』(SRCS9027)の歌詞カードにある、ポールに宛てたアートの手紙による解説を引用する。The song is asking: "Who will love?" Poetic personification is used for the answers: Greed ("the oak tree"), Vanity ("the swan"), Hypocrisy ("the wheat").(この歌は尋ねています「誰が愛するのか?」 詩的な擬人化がその答えに用いられています。貪欲が「樫の木」、虚栄が「白鳥」、偽善が「小麦」。)
2)ブラッド・ピット(Brad Pitt)主演、1995年の映画『セヴン』では7つの大罪をテーマに殺人が行われる。

●内容で展開その3:4回目にOKを出す物語構成
1)サムソンとデリラは4回目にOK:ユダヤの英雄サムソンをどうやったら無力にして縛れるか、デリラ(英語の発音はディライラ)はペリシテ人(the Philistines)に頼まれ、寝物語に聞き出そうとする。「七本の新しい弓弦で縛る」など3回までサムソンは嘘を教えるが4回目に「髪をそり落されたら無力になる」と教えてしまう。サムソンは髪を剃られて無力にされ、目をえぐり取られ、牢獄につながれる。時が経ち、髪が伸びて怪力が戻り、最後はペリシテ人を多数殺して「自爆テロ」。場所はガザ地区。現在はユダヤ人が自爆テロされる側。こんな話をしたら生徒はし~んとして聞いていましたね。
2)A.A.ミルンの詩Puppy and Iは5回目にOK:“Down to the village to get some bread. Will you come with me?” “No, not I.”
「村までパンを買いに、一緒に行くか?」
「いいえ、行かない」と、主人公の「僕」は、男の人、馬、女の人、ウサギに誘われるが4回断る。最後に子犬が誘うと、“I’ll come with you, Puppy,” said I.(一緒に行くよ、と僕は言った)と5回目にOK。この詩の“No, not I.”が歌の“Not I.”と似ている。
(参照: oldpoetry.com/opoem/46418-A-A--Milne-Puppy-And-I)
3)『小さい白いにわとり』は6回目にOK:1959~1976年まで小学校1年生の国語教科書(光村図書)に掲載。小さい白いにわとりが、パン作りを麦の種まきから始め、3匹を誘うが、「ぶたはいやだと言いました。いぬもいやだと言いました。ねこもいやだと言いました。小さい白いにわとりは、ひとりでたねをまきました。」のように、種まき、刈り入れ、粉ひき、パン焼きで拒絶され、にわとりだけが働く。ところがパンを食べる時になって3匹が「食べる」と言い出す。単に言葉の繰り返しで教材として採用されたのか、にわとりのような者が報われないのが「社会主義」だと揶揄しているのか…、その意図は不明。このような1~3の物語をこの歌と重ねて紹介するとおもしろいと思います。


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